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前橋地方裁判所 昭和59年(む)1207号 決定

被疑者 藤井清次 ほか二人

主文

本件各準抗告をいずれも棄却する。

理由

一  本件各準抗告の趣旨及び理由は、前橋地方検察庁検察官作成の準抗告申立書及び準抗告申立補充書計六通(昭和五九年(む)第一二〇七号、第一二〇八号、第一二〇九号)並びに弁護人作成の「準抗告の申立」と題する書面記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。

二1  まず、検察官からの準抗告の申立について判断するに、一件記録によれば、本件では昭和五九年一二月一四日前橋地方検察庁検察官が右被疑者三名につき一〇日間の勾留期間延長の請求をなしたのに対し、同日前橋地方裁判所裁判官は右延長期間を七日にする裁判をなしたことが明らかであるところ、検察官としては右七日の延長期間以後においてもなお捜査遂行上やむを得ない事由があると判断した場合には再延長請求が適式に認められる(刑事訴訟法二〇八条二項)以上、その方法によるべきであるから、本件準抗告はこれを申し立てるだけの利益を欠くといわざるを得ず、理由がない。

2  次に、弁護人からの準抗告の申立について判断するに、一件記録によれば、本件は、株式会社大野商事代表取締役である被疑者大野光高及び同社取締役である同大野明と前橋市役所土木課用地係長である同藤井清次との間において、右藤井が市道改良工事に伴う地上物件の移転補償工事について地権者の委任に基づいて同工事の施行業者として右会社を地権者に紹介するなどしたことの謝礼等の趣旨で現金九〇万円を授受したという事案であるが、右被疑者大野光高及び同大野明については、犯行の具体的態様、共謀内容等につき未だ十分解明されたものということはできない。また、右事案の罪質、態様等に鑑みると本件について多数関係者の取調等被疑者の供述の裏付捜査等をなす必要のあることが認められるが、いまだこれが未了であり、その捜査を遂げるためにはなお相当程度の日数を要するものというべく、右被疑者らには刑事訴訟法二〇八条二項の「やむを得ない事由」があるものと認められるから、結局、その勾留期間を延長した原裁判は相当というべく、本件準抗告は理由がない。

三  よつて、本件各準抗告はいずれも理由がないので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 山之内一夫 島田周平 宮崎万壽夫)

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